この前はHBOC検査の保険適応やサブタイプなどについて書きましたが
今回は、もしHBOCと分かったらどのような対策をとれるのか
どのようなことに気をつけなければならないのか
そんなところを中心に調べたことを書こうと思います
ちなみにまだ自分の検査結果がわかっていないので
ソワソワもやもやしたまま書いていますが
本当に検査結果待ちというのは嫌なもんですね
これから何年間も、再発していないかの検査をしなければならないと思うと
ちょっとうんざりしています
まだ手術もしていないんですけどね
ということでいきましょう
JOHBOC(日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構)
こんかいはおもにこちらを資料にして記事を書いています
いつも読んでいる 乳癌診療ガイドライン と同様に
診断治療について、HBOCのことに特化してまとまっています
詳しく知りたい方はぜひサイトを見てみてください
さてこのサイトの中から、特に私が気になったところを中心にピックアップしていきます
※乳がん・卵巣がん以外のがんの発生や対策については触れない予定です
あと、医学的用語として”BRCA病的バリアント保持者”という言葉がたくさん出てくるのですが
どうも 病的 病的 と言われることに抵抗があって BRCA(+)の人 と
このブログでは表現します 正確に言うとBRCA病的バリアント保持者となります
BRCA(+)の人の対策
まず対策を大まかに列挙
すでに乳がんを発症している人の対策
・乳がんを発症した乳房を温存するかどうかの選択
・乳がんが片側の人は反対側の乳房の予防的切除
・卵巣の予防切除
・切除していない乳房があれば、その健診
・タモキシフェン服用によるリスク軽減
・HER2陰性転移再発乳癌の場合の薬の選択
乳がんを発症していない場合の対策
・乳がんの検診
・両側乳房の予防切除
・卵巣の予防切除
・タモキシフェン服用によるリスク軽減
※ 大まかに書いたので、たとえば乳がんと卵巣がんを両方同時に発見した方や複数の乳がんが見つかっている方に十分に配慮できた記述ではないことをご了承ください
個別に深堀していきましょう
個人の感想も交えて
乳がんを発症した乳房を温存するかどうかの選択
推奨文:本ガイドラインで実施したメタアナリシスの結果から,BRCA病的バリアントを有する乳癌患者における乳房温存療法は,散発性乳癌患者に比べて温存乳房内再発率が高いことが示された。この傾向は観察期間が長くなるほど明確になることから,温存乳房内の新規乳癌の発症リスクは長期にわたって継続するものと推察された。ただし生存率の悪化に関するデータは認めず,温存手術を強く希望し温存乳房の新規乳癌発症のリスクや継続的な温存乳房のスクリーニングの必要性等を理解したうえで選択する場合には,これを否定しない。
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc2-2/b6/
温存乳房内再発は散発性乳癌患者の1.6倍であること,生存率に有意な差は認められないことからBRCA病的バリアントを有する患者に対する乳房温存療法を強く否定する根拠につながる結果は得られなかった。
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc2-2/b6/
まずはBRCA(+)だとわかったら、乳がん側の乳房の手術の方法をどうするかですね
自分だったら、残った乳房の再発率が高いのであれば全摘出してしまいたいなと思いましたが
(もともと、初診の時に「全摘で!」と言ったくらい、自分の乳房に思い入れがないもんで…)
がんが小さい段階で見つかった若くてトリネガの方なんかは、乳房全摘出を受け入れがたい(予防切除も含めれば両側となりますし)と思います。
基本的には全摘出を勧めるが、
①散在性の乳がん患者さんと比べて再発率が1.6倍であるということ、
②定期的にMRIで健診をしなければならないこと、
③再度乳房にできたときにどのような治療が受けられるか
などを知ったうえで、それでも希望がある場合は 強く否定はしない
ということは、主治医との相談と患者の希望って感じですね
上のリンクの全文では、さらに患者さんの満足度の問題や再建術についても触れられています
たとえば、一度温存術を選択してその乳房に再発があった場合、放射線治療を行っているので初回で再建した人に比べた見た目が悪くなること と記載せれていました
もともと乳房の温存をしたい人ではその見た目は重要かと思いますので
どのくらい違うのか、いまできているがんの大きさなどから詳しく聞きたいですね
ちなみに、HBOCにおける乳房の予防切除でのインプラントを用いた再建術は
“乳がん卵巣がんを発症している場合のみ”保険適応となっています
※自家組織での再建は自由診療
2022.06.28 間違えました!すべて保険適応です!!
乳癌になった方の乳房を温存したい方は、もちろん反対側の予防切除も行いたくないという方でしょうから、そのあたりのリスクとメリットを主治医としっかり相談する必要がありそうです
乳がんが片側の人は反対側の乳房の予防的切除
私はもしBRCA(+)だったら両方の乳房全摘、再建なしで行こう!と思っていました
遺伝性乳がんの再発率を90%ほど抑えれられるとの記載もありました(ナグモクリニックHPより)
また、慈恵医大の記事では
もう片方の乳房にも乳がんができる確率は、BRCA遺伝子に病的バリアントのある人は24%で、ない人の7%と比べて明確に高くなると報告されています。また、発症予防のための「リスク低減乳房切除手術(RRM)」を行うと、乳がん死亡率を48~63%減少させる効果があるため、このRRMを受けることが強く勧められています。
https://medical.jiji.com/column5/9?page=2
死亡率も下げられるとあります
JOHBOCのガイドラインでは
全生存期間は卵巣の予防切除をやっているやっていないで変わってくるので
そこを加味していないからデータが微妙との記載がありましたが
CRRMによるOSの改善効果を報告した論文が3編2)3)5),効果なしとしたものが3編4)6)7)であった。OSはあらゆる原因の死亡もイベントとして扱われるため,卵巣癌を発症している場合には乳癌以外のイベントによりOSが規定される可能性も十分に考慮する必要がある。このような背景がある中で,ほとんどの研究でRRSOの交絡因子の調整がされていないことがOSについて検討するうえで大きな問題となる。調整をした研究では,全死亡率がCRRM+RRSO群で7%とCRRM群で12%であったが,統計学的有意性の検証は行われていない2)
http://johboc.jp/guidebook_2021/doc2-2/b4/
とにかく再発におびえたくないので やろうと思っていました
しかし!先生と遺伝子検査のお話をするときに
うちは予防切除はできないのよ
だからとりあえず乳がん側を全摘にするかどうかなんだよね
と言われてびっくりしました!!
なにー!!てことは片方は全摘できても、
反対はまた別の病院でやらねばならんのか!!!
どうも、一定の条件を満たした病院でなければならないらしく
詳細はコチラに載せておきますが
認定病院、もしくはそれに準ずる基準を満たした病院でなければならないようです
とにかく基準を満たしていればできるので、できるかどうかは聞かないと分かりません
これは、予防切除の話が出たら、先生が教えてくれるでしょう
卵巣の予防切除(RRSO)
理想的には35~40歳の間に,出産の完了に伴って,リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)を推奨する。BRCA2病的バリアント保持者の卵巣癌の発症年齢はBRCA1病的バリアント保持者に比べると,平均して8~10年ほど遅いので,家系内の診断時年齢で予防手術を考慮するのに,より若い年齢で発症することが確実でない限り,BRCA2病的バリアント保持者については,RRSOを40~50歳に遅らせることは妥当である
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc2-3/c4/
前回の記事でも紹介したように、BRCA(+)の方が卵巣がんにかかる可能性は10~60%またもう一つのサイトでは27~44%と言われ
また、卵巣がんは乳がんと大きく違うことがあり
発見したときには進行していることが多いということ
それは検診をしていても ということです
検診していても進行した状態で見つかることが多い癌なので
検診でリスクを減らす効果が低いということですね
あと、卵巣がんは予防切除によりOS(全生存期間)の延長がわかっているので
乳房の予防切除よりも強く推奨されているようです
ただ、卵巣の切除は妊娠出産により密接にかかわってくることなので
私のように40歳を超え、
子供二人に恵まれていて
3人目も考えていなかったという状況の場合と違い
特に結婚、妊娠、出産前の方に関しては
そのリスクとライフプランを天秤にかけるような
難しい判断も含まれることと
ライフプランに関しては、自分で決定しなければ
誰も決めてくれないことが本当に
心理的な負担になると…
切除していない乳房があれば、その健診
➢乳癌の治療を受けており,かつ両側乳房全切除術を受けていないBRCA病的バリアント保持者に対しては,年に一度のトモシンセシスを考慮したマンモグラフィと造影乳房MRIによるスクリーニングを継続する。
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc1/1/
トモシンセシス とか言われると急に脳みそのシャッターが下りますけど
3Dのマンモグラフィのことですね
うちの病院でも
やりました、回りながら何枚か撮られるタイプの
乳がん・卵巣がんを発症している場合は
スクリーニング検査(検診)としてのMRIは保険適応なので推奨通りに受けられますが
乳がん・卵巣がんどちらも未発症の場合はMRIは自費になってしまいます
2017年のガイドラインでは、BRCA(+)で30歳未満の場合定期的にマンモグラフィを行うことで 逆に乳がんの発症率を1.9倍あげてしまうというデータも出ていて マンモグラフィを推奨していませんでした
今回のガイドラインでも MRIを実施できない場合はトモシンセシスを考慮したマンモグラフィとなっています
➢25~29歳,年に一度の造影乳房MRI検査(あるいは,MRI検査が利用できない場合にはトモシンセシスを考慮したマンモグラフィ),30歳前に乳癌と診断されている家族歴があれば,家族歴に基づいて個別化して対応する。
➢30~75歳,年に一度のトモシンセシスを考慮したマンモグラフィと造影乳房MRIを実施する。
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc1/1/
このほかに、超音波や造影CTに関する記述もありますが
データがそろっていないので 今のところはMRIが推奨されているようです
タモキシフェン服用によるリスク軽減
これに関しては 私はルミナルHer2タイプなので元々治療として
タモキシフェンの服用が必要であり
さらにBRCA(+)だったら反対側の乳房も予防切除しようと思っているので
あまり考えてもしょうがないところではあるのですが
予防切除をしたくないが 反対側の乳房での(もしくは温存で残した乳房での)
乳がんの再発を減らす方法として検討されていて
引用すると
最新のメタアナリシスの結果より,BRCA病的バリアントを有する乳癌患者はTAM内服により新規乳癌の発症が抑制されることが報告されている。しかしながら,至適投与量や至適投与期間に関しては研究間に非一貫性があること,OSの延長効果やBRCA1とBRCA2での効果の違いに関しては不確実性が存在する。また,HBOCの乳癌患者における予防目的での使用,保険適用外となっていることに留意が必要である。TAM内服による乳癌発症予防効果は,RRMによる乳癌発症予防の代替ではないこと,TAM内服後でも造影MRI等による乳房サーベイランスが必要であることに注意が必要である。
https://johboc.jp/guidebook_2021/doc2-2/b9/
ということで
予防切除の代わりにはなりませんよ
あと、投与期間や量が一定じゃないのでデータがそろってないです
そして、タモキシフェンを飲んでいても、健診のMRIは必要ですよ
あと、ホルモン陰性の人は予防のためにタモキシフェンを処方する場合保険適応になりませんよ
てことです
でも、予防切除しないって決めた人がリスクを減らせる選択肢があるのは良いことですね
確かにホルモンが抑制されることによってホットフラッシュなどの副作用も出ますし
妊娠出産を考えている人であれば使えないですが
それ以外の人は検討の余地ありですね
ここまで来て長くなりましたので
・HER2陰性転移再発乳癌の場合の薬の選択
と
・乳がん未発症の人の対策
については別記事にすることとしました
まとめ
・以下すべてBRCA(+)の場合
・乳房の温存は局所再発のリスクが高くなるが要相談
・全摘出後のインプラントによる再建は保険適応
・反対側の乳房予防切除は保険適応だが、認定病院(もしくは基準を満たす病院)でしか受けられない
・乳房が残っている場合にはMRIでの検診が推奨されている
・卵巣の予防切除は全生存率が延長するので推奨されている
・乳房が残っている場合はタモキシフェンにより再発率が下がる可能性があるが、予防切除の代わりにはならない
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